賃借人に特別の負担を課す特約について
特約の要件
①特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
②賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
③賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
特に、最高裁判例では、「建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払いを受けることにより行われている。
そうすると、建物の賃借人いその賃貸借において生ずる通常損耗及び経年変化についての原状回復義務を負わすためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗及び経年変化の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の通常損耗補修特約が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である」との判断が示されている。
また、消費者契約法では、その第9条1項1号で「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額の予定」等について、「平均的な損害の額を超えるもの」はその超える部分で無効であること、同法10条で「民法、商法」等による場合に比し、「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする」と規定されている。
したがって、仮に原状回復についての特約を設ける場合は、その旨を明確に契約書面に定めた上で、賃借人の十分な認識と了解をもって契約することが必要である。また、、客観性や必要性については、例えば家賃を周辺相場に比較して明らかに安価に設定する代わりに、こうした義務を賃借人に課すような場合等が考えられるが、限定的なものと解すべきである。
なお、金銭の支出を伴う義務負担の特約である以上、賃借人が義務負担の意思表示をしているとの事実を支えるものとして、特約事項となっていて、将来賃借人が負担することになるであろう原状回復等の費用がどの程度のものになるか、単価等を明示しておくことも、紛争防止のうえで欠かせないものであると考えられる。
平成23年国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン 再改定版 の原文を引用
通常損耗・経年変化の概念が無い(知識量や情報量が不足している)賃借人に一方的に契約書を読み進め、理解をしていないのに「納得してサインをしただろう」と言い放つ貸主もいます。
本来は貸主が負担すべき費用を「あなた(賃借人)が負担して下さいね」と、契約条項を明確に認識できるようになっているでしょうか?
レンタカーを借りて、代金(賃料)を払っているのに、返却する時に「タイヤがすり減った」「ウォッシャー液が減った」「オイルが減った」「車体が少し色褪せた」と費用請求される事はありません。
もちろん、自分の故意や過失で車に傷を付ければ、返却時に弁償が必要でしょう。
しかし、賃貸で部屋を借りる場合には、上記のレンタカーで言う所の「タイヤがすり減った」「オイルが減った」「車体が色褪せた」などの当然の事(クロスの日焼けや、床に使用感がでる)に関しても借りている側に負担させようとする特約が蔓延しているのです。






